あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「泣いちゃえばいいじゃない!泣いて、縋って、罵ってすればいいじゃない!!なんであんたはそんなにいい子ちゃんなの!」

みのりは焦れたように叫ぶ。
何だか私が怒られてるようで、身体を縮めた。

「……できないよ。ショックだったけど、そんなことしたら、彼が困るだけじゃん?」

きっと、彼は悩んだんだろう。
優柔不断で、優しくて、でも自分に嘘をつけない不器用なひとだから。

私の微笑みをみのりは痛々しそうに見つめる。

「あんたって、お人好し!」

「知ってる。でも、大好きなひとだったから。幸せになってもらいたいじゃん?」

「私はあんたに幸せになってもらいたいの!」

仕事中のクールな表情のおかげで、周りから冷たい人と思われがちなみのり。

だけど、本当は感情豊かで、友達思いで。

こうやって、私の代わりに怒って、必死になってくれる。

そんな友が心強くて、嬉しくて、私は今日精いっぱいの微笑みを浮かべた。

「ありがとう。みのり。私はみのりのおかげで、充分幸せもの」

「でも……」

そのタイミングで待っていたパスタが運ばれてくる。

「いただきまーす!」

私が元気な声を出して、パスタに手を付け始めたので、それ以上、みのりは何も言わなかった。

< 8 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop