あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
子供のためにも。
その言葉に私は、芽生えた命を抱きしめるように、自分のお腹を抱きしめた。
きっと、一人で命を守るよりも、二人のほうが心強い。
経済的にも、精神的にも、ありがたい。
でも、そんなことで、彼の未来を縛り付けていいの?
ヘッドハンティングの話もある彼。
私との結婚でその話が無くなるかもしれない。
そもそも彼は……婚約破棄された私を慰めるためにこの関係を始めてくれたのだ。
彼は被害者なのだ。
やはり伝えるべきではなかった。
彼なら……責任を取るって言ってくれる自信があった。
だから尚更、言うべきじゃなかった。
「中田。俺との結婚は嫌か?」
答えない私にしびれを切らした主任が再び問う。
その問いに私は思わず首を横に振った。
「違います」
嫌、なんかじゃない。
こんなにも好きなのだ。
嬉しいんだよ。
でも、好きだから、迷うのだ。
無言のままの私に主任は言葉を重ねる。
その真剣な瞳には、複雑な顔の私がいた。
「だったら、結婚な。来週の日曜には休み取れるから、お前のご両親に挨拶に行こう」