妖怪なんて見たくない!
「ねえ、柊木蘭ってさぁ」
こいつはいつも俺のことを
フルネームで呼ぶ。
たまにイラッとも来る。
「そのフルネーム、やめろよ」
「あれ、嫌だった?
名前で呼ばれる方がムカつくんだと思ってたんだけど」
「そっちのがムカつくし」
さすがにこれは黙ってらんなかった。
「じゃあ、蘭」
前かがみになって俺をニヤッとしながら覗きこむ七波。
別に俺はこんな奴に
変えられたりなんてしないけど。
「蘭が間違った方向に進まなければいいんだよ」
俺の過去の話を聞いた七波は
公園にやってきて、例のごとく話をする。
正直、
この言葉には心臓が掴まれたような、
罪悪感みたいなものを感じたけど。
もう、手遅れだ。
それに。
奇跡でもいい。
お兄ちゃんのせいでみんな死んじゃったって責められてもいいから。
あいつが目を覚ますのなら。
俺は何だってする覚悟だから。