妖怪なんて見たくない!
凛は俺を見つめたまま、続ける。
「あの時、狐の妖怪さんがいたんでしょう?」
凛は俺を責めないのだろうか。
気持ち悪いと、思わないのだろうか。
「…………………ああ、いた」
そう言うと。
「お兄ちゃんだけでも、生きててくれてよかった」
やめてくれ、凛。
俺が見えてなければ。
俺に変な力がなければ。
あの妖怪が俺についてくることも、
なかったんだ。
「……………妖怪が視えるなんて、普通じゃない兄貴だ。
そのせいで父さんも母さんも死んだようなもんだ」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」
はっきりと、凛は言う。
「凛は、不思議な力を持つお兄ちゃんが、
大好きだったし、
凛のことをずっと諦めないでいてくれたお兄ちゃんが、大好き。」
「……………………」