妖怪なんて見たくない!

亀井さんは運動部が駆けまわる夕方の校庭をぼーっと見つめながら独り言のように言う。


「……七波は信頼してると思うよ?
亀井さんのこと。


一緒に帰って(仕事を手伝ってもらってい)た時も。

七波は亀井さんの話ばっかりしてたよ」


俺がそう言うと。


「信頼してくれてるのは分かるよ。

でも七波は全然、昔の話とか、自分に関する話はあんまりしてくれない」


そう言われて気付く。

俺は妖怪が見えた昔の話はよくしたけど、
七波は過去の話なんて一度もしたことがない。


それに。

俺は七波が何を好きだとか嫌いだとか、
そういうのは一切知らない。



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