妖怪なんて見たくない!
「別に、蘭はなんにも悪くなくない?」
「………や。
前にお前のこと、妖怪とトラブルとか、
そういうのなしに平和に生きてきたばかなやつ、とか思ってた。
それに、散々お前の好きな妖怪を貶した」
ぎゅ、と蘭の手が私を強く握る。
もしかして。
「……もしかして、私のこと。
誰かに聞いたの?」
「ああ。……峰葉から、聞いた」
「………そっか」
私にとっては。
「本当の親に愛してもらえなかった辛い過去でもあるけど。
……それ以上に。
峰葉に会えて、一緒に過ごして。
大切なことを知った、大切な過去なんだ」
それを聞いて、目を開く蘭。
「………辛くないのか」
「……うん。今は大切な人たちがいるから。
今があるのに後ろばっか見てらんないでしょ」
泣いてるのはもったいない。
笑えば笑うほど、
幸せになれる気がするから。
「………すげえよ、おまえ」
「ふふふ」