妖怪なんて見たくない!


「別に、蘭はなんにも悪くなくない?」


「………や。

前にお前のこと、妖怪とトラブルとか、
そういうのなしに平和に生きてきたばかなやつ、とか思ってた。

それに、散々お前の好きな妖怪を貶した」





ぎゅ、と蘭の手が私を強く握る。





もしかして。




「……もしかして、私のこと。
誰かに聞いたの?」


「ああ。……峰葉から、聞いた」


「………そっか」



私にとっては。



「本当の親に愛してもらえなかった辛い過去でもあるけど。

……それ以上に。

峰葉に会えて、一緒に過ごして。
大切なことを知った、大切な過去なんだ」


それを聞いて、目を開く蘭。


「………辛くないのか」

「……うん。今は大切な人たちがいるから。

今があるのに後ろばっか見てらんないでしょ」


泣いてるのはもったいない。

笑えば笑うほど、
幸せになれる気がするから。


「………すげえよ、おまえ」


「ふふふ」


< 448 / 482 >

この作品をシェア

pagetop