恋が叶うなんて思うなよ。【中編・完結】
別れ際の香の切なげな顔が浮かんだ。

花を連れていく涼太の、怒ったような表情を思い出した。



朝比奈は、目元を押さえた。

濡れた指が、涙の在り方をつたえる。

そして、花の不器用な笑顔が浮かんだ。

「吉永さんの、そばにいたいんだ」


精一杯の言葉に、朝比奈は唇を噛んだ。

あぁ、伝えてしまった。

いや、本当は前から伝えたかった。

色々なことを気に過ぎて、自分の気持ちを殺していた。
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