恋が叶うなんて思うなよ。【中編・完結】
香は、眉をさげ、困った顔で笑っていた。

「こっちこそ、ごめんなさい。ちゃんと遊を愛せなくて」


限界だったのは、朝比奈だけでなく、香もだったようだ。

朝比奈は手を伸ばした。

恋い焦がれていた手を手放すために。

二人は付き合いたての頃のような、相手を気遣うような笑みをつくり、握手をして、別れた。


冷たい、やわらかな香の手の感触にひたりながら、朝比奈は携帯をもう一度かけた。
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