お告げの相手は誰ですか?
「弟の右京は乗り物がとても苦手で、もちろん車の免許も持っていなくて。
ここまで来るのには、車が必要でしょ?」
律はますます嫌な予感がした。
「律さんが車の運転が抜群に上手い事は、社内でも有名で私も知っている。
確か、お父様が昔レーサーだったのよね?」
「はい…」
律の父の譲二は若い頃は将来を有望されたレーサーだった。
でも今は、スポンサーの立場でカーレースに携わっている。
そして、律も小さい頃からカートで慣らした運転テクニックで高校まではレーサーになる事を夢見ていた。
確かに、運転は大好きだ。
週末は父とよく遠くまでドライブに行く。
「も、もしかして…
私は弟さんの運転手ですか?」
清花は小さくうなづいた。
「右京には私の第一秘書になってもらう。
そして、律さんには第二秘書ということになります。
でも、主には、右京の手助けもお願いしたいの。
仕事はできるんだけど、社会人としてはまだまだなので…」
「あの…
その右京さんって、年は?」
「今年で29になります」
律は大きくため息をついた。
29で社会性がなくって、運転ができない?
そんな人の運転手?
夢のお告げなんて一気に吹き飛んでしまった…
こんな仕打ちが待ち受けているなんて、これこそ夢であってほしい。
お婿捜しは一旦小休止…
そんな気力も体力も出ないくらいに、私、落ち込んでいます…