お告げの相手は誰ですか?
土曜日の朝、律は慎之介との待ち合わせの時間より早くに会社に着いていた。
引き継ぎのための資料を作るためだ。
慎之介にはできるだけ迷惑をかけたくない。
律はそれに関しては、会社の先輩として心からそう思っていた。
この日の総合企画部はほとんど人がいなかった。
律がパソコンから資料を印刷していると、入口のドアから清花がちょこんと顔を出した。
「律さん、今日はどうしたの?」
清花はジョギングの途中に、会社に立ち寄ったらしい。
「あ、実は…
私の後に入る田中君に、今日引継ぎをすることになったんです。
平日は中々暇が作れないので…
あ、係長には報告済みです」
清花は笑顔で頷いた。
「了解しました。
律さんの真面目なところが私は大好きよ。
でも、土曜日なんだからあまり無理しないこと」
清花はそう言うと、いつの間にかそこからいなくなった。