お告げの相手は誰ですか?
律は頼まれた資料をファイルに入れて準備した。
すると、ちょうど10分後に誰かが階段を駆け上がってくる音がする。
「律さん、すみません。
お手数をかけてしまって…」
取りに来たのは慎之介だった。
律は首を横に振りながら、笑顔でファイルを慎之介に渡した。
「律さん…」
慎之介は寂しいような困った顔をしている。
律は慎之介からのLINEを返してない事を、今思い出した。
「あ、ごめん… LINE返してない…
昨日、忙しくて、後でと思ってたら、ごめんね」
慎之介はファイルを握ったまま「大丈夫です」と無理に笑ってくれた。
律に会釈をして秘書室から出て行こうとした慎之介の腕を律は握ってこちらに引き寄せた。
「慎之介君、本当にごめんね。
土曜日の夜、楽しみにしとくから」
慎之介はホッとした表情を浮かべて、慌てて自分の係に帰って行った。
「誰もいなくなったと思ったら、何、若い男といちゃついてんだ?」
開け放たれたドアの前に、目をつり上げた不機嫌そのものの右京が立っていた。