あなたに贈るホラー短編小説
僕は、
左腕に感じる激痛で
張り裂けんばかりの叫び声を上げた。
亜美が握りしめている果物ナイフは、
脅かしではない。
亜美は、
本当に僕のことを……。
「犯罪ですって。
一生を台無しにするですって。
馬鹿なことを言わないで。
私は、
今すぐにでも死にたいの。
こんな醜い顔のまま生きていて
私が幸せになれると
あなたは思っているの?」
亜美はそう言って、
不気味な笑みを浮かべたまま
声をあらげた。
「これから私が
あなたを裁くわ。
もしもあなたが、
嘘をついていると
私が感じたならば、
あなたはその時点で死刑が確定よ。
この果物ナイフが、
あなたの命を奪うわ。
真実は、
常に一つよ。
あなたは真実だけを話せばいいの」
亜美はそう言うと、
まぶたがまともに閉じない赤い瞳で
僕の顔をギロリと睨んだ。
「あの冬の風が強い日の夜中に
私の家に火をつけたのは
島田信一、
あなたですね」