あなたに贈るホラー短編小説
僕は、
亜美の質問に
言葉が詰まった。
亜美はおそらく
あの日の放火の犯人が
僕であることを
確信している。
もしも、
僕がしらを切ったならば、
亜美は容赦なく
右手に握りしめた果物ナイフで
僕を刺し殺すのではないか?
きっと亜美は、
僕を刺し殺すことに躊躇はしない。
亜美は、
僕に罰を与えることができれば、
死んでもいいと考えているに違いない。
僕の額から
嫌な汗が流れ出した。
僕の体は、
きつく縛られたロープのせいで
少しも動くことができない。
どうすれば僕は、
助かるのか?
真実を言うべきか
言わざるべきか?
どちらの選択が
僕の命を救うのだろう?
「早く答えなさい!」
亜美の言葉に
殺気がこもった。
僕はもう、
次の自分の言葉に
自分の運命をかけるしかなかった。
真実は一つ。
僕は、
亜美の言った言葉が
恐ろしかった。
「亜美、
すまなかった。
あの日、
きみの家に火をつけたのは、
僕だ」
僕はそう言ったあと、
自分の体が
カタカタと震え出すのがわかった。
僕は、
あの日の罪を認めてしまった。
僕は今、
間違った選択をしてしまったのだろうか?
僕はそう思い、恐る恐る亜美の醜い顔に目を向けた。