あなたに贈るホラー短編小説
「やっぱり、
あなただったのね……」
亜美の震える声が、
僕の耳に飛び込んだ。
「ずっとそうだと思ってた。
私が何度考えてみても
いつもその答えにしか
至らなかったから……」
亜美はそう言って、
火傷のせいで焼けただれ
皮膚がつっぱって
口角が上がりっぱなしの
不気味な笑みを浮かべながら
ポロポロと大粒の涙を流した。
僕は、
亜美のその醜い姿を見ていると、
恐ろしくて体が震えた。
「私はあなたが憎かった。
殺してしまいたいと思ってた。
どうして私だけが、
こんな目にあわなければならないのかって。
どうして私だけが、
こんな醜いバケモノになって
生きていかなければならないのかって。
私は今すぐにでも
この果物ナイフで
私の憎しみを
すべてあなたにぶつけたい。
でも私は
あなたに弁明の機会を与えるわ」
亜美はそう言って
ふりかざしていた果物ナイフを静かに下ろした。
「私に謝って欲しいの。
心から誠意を込めて。
私の心の中にあるあなたへの憎しみを
全部、溶かしてしまうくらいに」
僕は亜美のこの言葉を聞いて、
亜美は
何て馬鹿な女だろうと思った。
このとき僕は、
自分の命をかけて
生涯で最高の演技を亜美に見せてやろうと
心の中でほくそ笑んだ。