あなたに贈るホラー短編小説

「信一さん、
私たち
あの世では仲良く暮らせるかしら?」




僕は亜美のその言葉を聞いて、
恐ろしさから奇声を発した。




僕は今、
幸せなのに。




僕は島田家の婿になって
すべての夢が叶ったのに。




僕はやっと
貧しさから抜け出して
贅沢な暮らしを手に入れたのに。




「信一さん、
私、やっと信一さんと
一緒になれるのね。


私、ずっと夢見てたの。

この日が訪れることを」




「亜美、
やめろ。
やめてくれ。


僕たち、
死ななくてもいいじゃないか。


生きて僕たちは、
幸せになろう」




亜美は僕のその言葉を聞くと
ゆっくりと果物ナイフをふりかざした。




「信一さん、
あなたのその言葉は嘘よ。


私にはわかる。


あなた有罪ね。


真実は、
常に一つだから……」




亜美はそう言うと、
不気味な笑みを浮かべながら、
右手に握りしめた果物ナイフを勢いよくふりおろし、
僕の左胸に突き刺した。




〈 どうしてこんなことに…… 〉




僕は左胸に
燃えるような激痛を感じながら、
最後にそんなことを思い、
やがて意識を失った。
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