あなたに贈るホラー短編小説
幼い頃の僕は、

つらいことがあると、

一人で部屋の隅に座り、

じっと目を閉じて夢を見た。






いつの日か僕は、大人になって、

こんな殺伐とした家の中から、

抜け出したい。






いつの日か僕は、

お金持ちになって、

父と母とは、

真逆の生活をしたい。






僕が目を閉じて夢を見るとき、

僕の目頭はひとりでに熱くなり、

大粒の涙が、ポロポロと

頬を伝って流れ落ちた。






貧しさから抜け出したい。






そのことが、僕の心の中にある

たった一つの願いだった。
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