あなたに贈るホラー短編小説

僕の背後に立っていたのは、
僕のかつての恋人、
亜美だった。




僕は彼女の顔を見て、
自分の心臓が早鐘を打ち始めたのがわかった。




〈 どうしてこの女がここに…… 〉




僕はそう思ったあとに
これは夢なのだと
自分に言い聞かせた。




だって、
命を落としそうなほどの火傷を負った亜美が、
かつてと同じような美しい姿で
ここにいるはずがない。




亜美は美しい。




でも、
亜美には静子と違って
決定的に足りないものがあった。




亜美は僕と同じく貧しい家の子供だった。




亜美と結婚しても
僕は幸せになれたのかもしれない。




でもそれは、
僕の夢や憧れとは違う。




だから僕は、
亜美と別れたかった。




そうしなければ、
僕は幸せをつかみそこねると思ったから……。
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