あなたに贈るホラー短編小説
二度と会いたくないと思っていた亜美が、
僕の気持ちとは裏腹に
僕の顔を見て微笑んでいた。
「私、まだあなたに話してないことがあったから、
今日はそれを言いにきたの」
亜美は僕にそう言ったが、
僕には亜美と話すことなど何もなかった。
僕はもう、
亜美とは違う人生を生きている。
こんな死にぞこないと
僕はもう
関わりたくはない。
「風が強い冬の日の真夜中に、
私の家が火事になったの。
警察が放火だって言ってたわ。
犯人は、
私が家から逃げられないように
私の家のまわりすべてに
灯油をまいたの。
あの放火は、
ただのイタズラではなくて
殺意のある放火だった」
僕は亜美の言葉を聞いて、
自分の心臓が
さらに早鐘を打つのがわかった。
「殺意のある放火だなんて……、
私は、
誰かに殺されなくてはならないほど
憎まれていたのかしら……」