あなたに贈るホラー短編小説
亜美がそう言ったあと、
僕の方にゆっくりと近づいてきた。
〈 来るな! 〉
僕はそう思って
亜美から逃げようとしたが、
僕の体は金縛りにあったように
少しも動いてはくれなかった。
「私ね、
炎に包まれて
とっても怖かったの。
メラメラと燃える炎が、
とても熱くて
逃げ場所なんてどこにもなくて……」
〈 来るな!
死にぞこない。
あそこであのまま
死んでくれれば良かったのに 〉
僕は亜美から逃げたかったが、
僕の体は、
やはり少しも動かなかった。
「あなたは誰だと思う?
私を殺そうとした人が……。
あなたは誰だと思う?
私がいなくなって
一番、得する人が……」
亜美がそう言って、
僕の首すじに
そっと手を伸ばしてきた。
〈 やめろ! 〉
僕は逃げ出したかったが、
僕の体は動かない。
〈 やめろ!
お願いだから…… 〉
亜美の白い手が、
僕の首にそっと触れたとき、
僕はドキリとして、
夢から醒めた。