【短】オンシジウム

寧ろ、オシドリ夫婦並みの信頼で心配ないと解釈され出す始末だ。

再び流れる和やかな空気と音楽とは裏腹に僕の胸はチクチクと痛む。

会話を楽しみながらも何処か気になってチラリと君を盗み見る。

優雅に舞う君は美しかった。

僕はここで初めて気付く。

他人に嫉妬心を感じる位にはまだ君を好きでいたんだ…と。

自覚したら最後、もう平静ではいられない。

曲が終わるのを待った。

一曲がこんなに長いことを僕は知らない。

君は僕が見ていることに気が付いているだろうか?

優雅な音楽が終わると、男にエスコートされながら頬を上気させて君は戻ってくる。

歩き出した僕の足は真っ直ぐに君の元へ向かった。

途中で花瓶に飾ってあった花の中から一輪の黄色い花を抜き取る。
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