悪夢から蛇
 冬に教室の窓を開けると、すぐに誰かから閉めるように言われてしまうものだ。

しかし今は放課後で、この教室は移動授業でしか使われない場所なので、僕に文句を言ってくるヤツは誰もいない。

 ぼーっと外を眺めていると、突然明かりが点いて教室の中が明るくなった。

「信彦! こんなところにいたのか。結構探したぜ」

 窓の桟にくっついてしまった腕を引き剥がしながら振り向くと、教室の入り口に健司が立っているのが見えた。

 健司は中学の頃からの友達だ。

中学の三年間続けて同じクラスだったので、自然と仲が良くなった。

腐れ縁なのか、二人そろって地元の市立高校に入り、一年目こそはクラスが離れてしまったが、高二になってまた同じクラスになることができた。

「こんなとこで外を眺めてたりしたら変人だと思われるぞ。せめて電気は点けろよな」

 健司は僕の側まで歩いてきて、「よいしょ」と机の上に跳び乗った。

危うく健司の尻に敷かれそうになった手を、僕は慌てて引っ込める。

「いいじゃん別に。誰もいない静かな教室って好きなんだよね」
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