今日もきみに夢中♥
だけどいつまでも、恥ずかしがってもいられない。



幸い、周りの観光客はあたしたちに目もくれない。



「保留って…」



「今まではさ。フィアンセなんて誰でもいいって思ってたけど…俺も気が変わった。親父に掛け合ってみる」



気が変わった…。



「今のやり取りで、あたしとはムリって思ったってこと?」



それなら、悲し過ぎる。



気持ちが伴わない結婚なんて嫌だと思ってたけど、この旅行で少しは気持ちも近づけた気がしてたから。



「いや、その逆…」



逆?



ポカンと口を開けるあたしに、優しい眼差しが降り注ぐ。



「もっと、花咲のことを知って。その上で、自分で決めたいんだ…」



ああ、それは。



やっぱりあたしじゃムリだってことだよね。



「え。なんで悲しそーな顔してんの」



コタちゃんが、不思議そうに顔をのぞき込んでくる。



「だって、あたしに決めるには迷いがある…そーいう意味だよね」



あたしの言葉に、コタちゃんが眉をひそめた。



困惑気味なのが、目に見えてわかる。



気持ちがない上でのフィアンセなんて嫌だって、自分で望んでたことなのに。



現実を突きつけられると、どうしてこうも辛いのか。



乙女心って、フクザツだ。



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