眼鏡男子に愛されて


「おすすめの本…とか、ありますか……」


「おすすめ?」



小さな声で呟いた泉美に、俊は聞き返す。


「ぁ、昨日…図書カード見て、たくさん読んでたから……すいません、突然!!」


そう言って、泉美は真っ赤な顔で黙り込む。


「そっか。いいよ。こっち」


そう言って、自然に泉美の手をとって奥の棚へ足を運ぶ俊。


(え、ええええ!? ちょ、手! 手!////)


あわあわしている泉美をよそに、俊は小さな手をきゅっと、気づかれない程度に握りしめる。


あたたかくてやわらかいその感触が愛しくてたまらなく、泉美に気づかれないようににやける口を隠した。


「ここだよ」


奥から2番目の棚の前で立ち止まると、俊は薄いクリーム色の本を取り出した。


「これ、文体もやわらかくて読みやすいし、挿絵も綺麗だから、瀬野さん好みだと思うよ」


「わぁ! ありがとうございます!!」


確かにその本は表紙が綺麗で、引き込まれそうで、私がいつも好んで読むようなものだった。



(…え、でもなんで私の本の好み……それに、名前も……。私、教えてないような…)


不思議に思った泉美がチラリと目線を見上げると、俊と目が合う。


「っ!!////」


その瞳があまりにも優しくこちらを向いていた気がしたので、急いでまた下を向く泉美。


(うわーもうどうしようっ……かっこ良すぎですよ!)


そんなことを考えて上を向けないでいたから、泉美は気づかなかった。


俊の瞳が、先ほどにも増して最上級の甘さを秘めていることに。


「覚悟しておいてね……」


と、俊が呟いていたことに。

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