眼鏡男子に愛されて
眼鏡男子の嫉妬
それから、泉美は毎日放課後に図書室に向かい、俊との時間を過ごした。
おすすめの本を教え合ったり、ただのおしゃべりに興じたり、時には勉強を教えてもらったり。
ああ、私、篠宮先輩のこと、好きなんだ。
泉美が自覚したのも、そう遅いことではなかった。
「篠宮先輩!」
「こんにちは、瀬野さん」
今日もいつもの通り泉美が図書室に行くと、俊はにっこりと笑って隣の椅子を引いてくれる。
泉美がお礼を言ってそこに座ると、俊は読んでいた分厚い本を閉じた。
「今日は何を読んでるんですか?」
「アガサ・クリスティだよ。最近外国文学にハマっててね」
そういえば、最初に会った時も難しそうな外国文学を読んでいたな、と思い出す。
「すごいですね。私そういうのはさっぱり……」
「ははっ、本にも向き不向きがあるからね。好きなものを読めばいいよ」
眼鏡の奥の目を細めて、優しそうに笑う俊に、泉美の胸が高鳴る。
きゅうっと苦しくなる胸は、最近休むことを知らないようだった。
笑顔を見るだけで。
手が触れるだけで。
視線を向けられるだけで。
これ以上ないほどに、好きだと感じる。
この時間がいつまでも続けばいいのにと、泉美は思った。