眼鏡男子に愛されて
……………えっ?
次の瞬間、泉美の目の前にいた男子生徒は見事に吹っ飛んでいた。
「はぁっ……はぁっ……」
「篠宮………先輩……っ」
呆然と呟く泉美に俊はにこりと笑いかけると、スタスタと男子生徒に歩み寄った。
耳元に口を寄せ、泉美に聞こえないくらいの声で呟くように言う。
「あの子は俺のだから。……次、手だしたら、マジでどうするかわかんないよ?」
「ひぃっ……す、すいません、でしたあああ!!」
地をはうような俊の声に、男子生徒は顔を真っ青にして逃げていった。
「……はぁっ…」
力が抜けてへたり込む泉美を、俊が急いで抱きとめる。
弱々しく俊の服をつかむ泉美の手は、震えていた。
「ごめん……、瀬野さん…。俺がもっと早く来てれば…」
「違います! 篠宮先輩は来てくれました……。それだけで、十分、です」
そう言って、無理に笑う泉美。
その痛々しい笑顔を見た俊は、辛そうな顔で、泉美を抱きしめた。
「え!? ちょ、篠宮先輩!?」
「……俺にこうされるのは….、嫌?」
きゅうっと力を込めて抱きしめる俊に、泉美は首を横に振る。
「嫌なわけ……ないです」
「…………そっか」
そう言って、俊は再び力を込める。
誰にも渡さないとでも言うように。
隙間なく、けれど割れ物を扱うように丁寧に。