眼鏡男子に愛されて
(あの人、眼鏡変えたんだ!)
(ああ! あの人もったいない! もう少し明るめの方が似合うのに!)
こうやって、いつも眼鏡の人を観察しては心の中で、ひとり眼鏡談議に花を咲かせるのが、一週間に一度の泉美の楽しみなのであった。
(ああ〜! 今のずれた眼鏡の直し方グッジョブ!!)
「………の、……」
(おおー!! 思い切ったなあの人! でも悪くない色のセンス!)
「…っの!……」
(あの人はノンフレーム似合いそうなのになーーーー!!)
「……あのっ!!…」
「わあ!?」
突然かけられた声に、思わず驚く。
ちらほらとこっちを見た視線に苦笑いをしながら、泉美は目の前に視線を移した。
厚いハードカバーの外国文学が置かれている。
「あ、すいません気づかなくて! 貸出ですね? 返却は一週間後になりま……」
顔を見上げて、思わず目を見開く。
う、………わぁ………
目の前にいたのは、まさに運命の人だった。
細い線で縁取られたスラリとした輪郭に、少し長めだが清潔感のある黒髪。
切れ長の瞳と、薄い唇。
そして何より、シンプルなデザインのノンフレームの眼鏡。
女の子たちが騒ぐような、派手なイケメンではない。
でも間違いなく、まじまじと見ればわかる。
その整いすぎた美貌はシャープな眼鏡と相まって、およそ高校生とは思えない色気と知的さを醸し出していた。
(うわああああああああっ!!//////)