眼鏡男子に愛されて
俊side
その子を初めて見たのは、一年前の春だった。
校庭の桜が満開になった頃、俺はいつものように図書室で本を読んでいた。
子供の頃から本が好きで、毎日脇目も振らず本を読んでいた。
それは高校に入っても変わらなくて、今も毎日のように図書室に通っては本を読んでいる。
「…ふぅ……」
ちょうど一冊を読み終わって、ふと何気なく窓の外に目を向けた俺は、
一瞬で心を奪われた。
こぼれんばかりに咲き誇る桜の下に、嬉しそうにたたずむその少女に。
綺麗でやわらかそうな黒髪をなびかせて、淡い薄紅色の中で静かに微笑む彼女に。
初めてだった。
本以外のものに、そこまで心を奪われたのは。
そしてこの瞬間、俺はこの少女に、恋をしてしまっていたのだ。
笑ってしまう話だが、俺は初恋だった。
今まで人を好きになったことなんてなかった。
恋愛小説もいくつも読んだし、別に興味が無いわけでもないけれど、それでも美人だと言われる人を見ても「そうだな」としか思わなかった。
それに何より、美しい見た目に、心が釣り合っていない人間を、俺は何人も知っている。
だから、人を好きになるなんて、自分には一生体験できないかもしれないと思っていたのに。
そんな俺の心に、いとも簡単に入ってきた彼女は、俺の予想を超える存在だった。