眼鏡男子に愛されて
そして幸運なことに、彼女は図書委員になった。
おかげで俺はいつも彼女を見ていたし、(気持ち悪いとは言うな)友達との会話から、彼女のことをいろいろと知ることも出来た。
2年生だということ。
頭はそこそこいいということ。
運動は苦手だということ。
本が好きだということ。
そして、
眼鏡が好きだということ。
なるほど、確かに、時折ふとぼーっと彼女が見つめる先には、眼鏡をかけた人物がいることが多い。
中でも特に、ノンフレームや銀縁などの、シンプルなものが好きなようだった。
それは男女関係なく、ただ単純に眼鏡が好きなのだとはっきりわかった。
ある日の放課後、俺はいつものように図書室で本を読んでいた。
時折彼女の方を見ては、今日も真っ直ぐで曇りのない瞳に、柔らかな笑顔に、胸が締め付けられるのを感じる。
だが、今日はどこか違った。
彼女の視線が、ある人物に向いていたのだ。
誰かは知らない。
銀縁の眼鏡をかけた、大人しそうな男だった。
間違いない、彼女はその男をずっと見つめている。
それに気づいた瞬間、俺は今までにないほどの、嫌な感情におそわれた。
彼女を想うのとは違う、痛くて苦しい胸の締めつけ、狂おしいほどの彼女への愛しさ、そして。
彼女の視界にうつることのできる男への、憎悪。
これが『嫉妬』なのだと気づくのに、そう時間はかからなかった。