眼鏡男子に愛されて


嫌だ。

嫌だ、嫌だ。


彼女の瞳が、他の男の方に向くのが。

彼女の瞳に、俺がうつっていないことが。

自分にこんな感情があるなんて、知らなかった。



けれどもうなんだっていい。

恥も外聞もあったものじゃない。


彼女の瞳にうつれるのなら。

彼女が僕という存在を認識してくれるなら。



俺はこの時、改めて、彼女への恋心を受け入れた。



もともと、目はいい方ではなかった。

コンタクトもつけていたし、ちょうどいい。


彼女が好みそうな、ノンフレームの眼鏡をかけて、爆発しそうな心臓をおさえながら、彼女の元へ本を借りに行く。



いつもなら、彼女は俺の存在なんか気にもとめない。


優しくふんわりとした、あの愛らしい顔で笑いながら、その時は確かに俺を見るけれど。



次の瞬間には、また眼鏡をかけた人物へと視線が戻る。


以前はそれでも良かった。

自分は彼女を見ているだけで、それだけで満足だと思っていから。



けれど、違った。

自分の中には、醜い嫉妬も、独占欲も、彼女の瞳にうつりたいという浅ましい思いさえ、溢れかえるほどに満ちている。


だから、こうしてでも、彼女に俺という存在を知って欲しい。




そして彼女が顔を上げた時、彼女の瞳がわずかに見開かれ、俺の瞳と交差した時ーーーーー、









俺の心は、歓喜に震えた。










絶対に、この腕に抱きしめてみせる。

その笑顔を、独り占めしてみせる。


世界で一番幸せにする自信があるから、どうか、どうか、








俺の隣に………………。





俊side end
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