運命の恋は健康診断から始まる

立ち上がったその人が私の前の椅子に座った。



優しそうな目が私をチラッと見てきて、やっぱり緊張してしまう。


「お待たせしました。高倉宗一郎さんですね。振動覚の検査しますのでここに左手の人差し指を軽く乗せて下さいね」


だけど私も一応プロなので、そんな気持ちは隠して笑顔を作る。


「あ、指先だけで。肘は机についてもいいのでちょっと大変ですけど他の指は触れないようにしてくださいね」


そう言いつつ手に触れてしまいまたドキドキするけど、これは別に高倉さんだからってわけではない。


他の人でもしてるし、検査の説明なんだからドキドキするな、私。


指、長いし……仕事してるから黒くなってるけど綺麗な手だな。


そんな事をまたドキドキしてきてしまって慌てて機械の方を向く。


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