運命の恋は健康診断から始まる
「あ、ご、ごめんね。やってるうちに段々分かんなくなってきちゃって」
そう言って指先をタオルで拭きながら困ったように笑う高倉さんに何だか胸がキュンとする。
ちょっとかわいいとか思ってしまった。母性本能をくすぐられるってこういう事だろうか。
耳に響く声も素敵に思えてしまう。
またドキドキしてしまう心臓をごまかすように微笑む。
「全然大丈夫ですよ。神経使う検査ですからね。じゃあ、もう一回やりましょう」
リラックスして健診を受けてほしくて笑顔でそう言うと高倉さんも私を見て笑う。
ああ、やっぱりときめく。もっと若い頃はこんな年上の人、ありえないと思ってたけど。
なんか自分も年を重ねてるんだなと思って感慨深くなる。
当たり前か、私も今年で三十歳になるんだし。
でも、こういう風になるのはこの人だけなんだよな。その差ってなんなんだろう。