運命の恋は健康診断から始まる
す、好きな人って。この人は健診先のお客さんで、ちょっと素敵だなと思ってただけで。恋になるわけがないと、そう思っていたのに。
「歩ちゃん、車?」
宗一郎さんにそう聞かれて私はハッとして顔を上げる。
「いえ、電車です」
そう答えると宗一郎さんは車の鍵を私に見せる。
「俺、車だけど。送ってこうか?」
その申し出は嬉しいけど、私は首を横に振った。
「だ、大丈夫です。電車で帰れますから」
「あ、そうだよね。家とか知られるの嫌か」
また宗一郎さんはちょっとシュンとしてしまうけど、そういうのじゃなくて早く家に帰って寝て身体を休めてほしいだけなんだけだ。
もう少し一緒にいたいと思ってしまったけど、そんなわがまま言うわけにはいかない。
「そうじゃなくてですね、早く家に帰って身体を休めた方がいいと思いまして。無理してほしくなかったんです」
私がそう言うと宗一郎さんは一瞬、目を見開いてから笑い出した。