俺と元カノとストーカー
その場はテキトーに『あぁそうなんですね。』とか言って、軽く流した。


貞子はそれ以上何も話し掛けてこなかったが、ただ俺の目の前から去る事はなかった。


視線をケータイに戻しても貞子からの視線はビシビシと感じる。 自宅の最寄り駅に早く着いてくれ!と願いながら、その視線をただただ浴び続けていた。


『次は~泊木駅~。泊木駅~。』

車内アナウンスに安堵した俺は、貞子に『すみません、降ります。』と言って、貞子をその場からどかすようにしてドアから降りた。

その最寄り駅はいわゆる無人駅というもので、降りる人も多くない。 何人かは顔も覚えているぐらいだ。

その日も俺を入れて10人居たか居ないぐらいの人数しか降りていなかったんだけど、ただ、何となく嫌な予感はしていた。

切符を入れる箱に切符を入れて小さすぎる駅の構内から抜けると、道が4方向に分かれていて皆それぞれの帰路に着く。


俺と同じ方向に帰るのはいつももう一人の若い女性だけ。勿論、知り合いでも何でもないし夜道なのであまり距離感をつめるのもイヤらしいので、適度な距離を保ちながら同じ方向に歩いていく。


田舎という事もあり、辺りは静かなので足音は案外響くんだ。 この音が何ともリアルでちょっとした恐怖感とゆーか緊張感を演出するんだけど、この日はいつもと何かが違う。


足音が2つじゃない!!
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