sweetlove
そこに、「俺の大事な弟泣かしたのだーれだ?」と笑顔で現れた男性に皆が硬直する。

紛れもない、トッププレイヤーの野田樹(ノダタツキ)選手だったからだ。

ん?今、弟って言ったよね?誰のこと…?
と思いながら辺りを見渡したが泣いてる人物は一人しかいない。

もしかして…怜央のことなの?!

私は、思わず後づ去った。

皆もざわざわしている。

怜央はいきなりの登場に驚きながらも、

「たつニィ~」と言いながら樹選手に抱きついていた。

「誰に泣かされた?」と優しく聞かれ、

私を指差す怜央。

私を睨み付けるように、樹選手が私を見た。

そして「あー!」といきなりでかい声をあげるので、皆が驚いて一斉にそっちをむく。

気にすることなく続ける樹選手。

「河野みずきちゃんだよね?」って。

えっ?何で…知られてるんだろう?

はい!と言うと、「やっぱり~!いやぁこんなとこで会えるなんてね~」って私に笑顔を向けてくる。

そして私に近づいてきたと思うと、いきなり手を差し出して握手を求められた。

憧れの選手からのいきなりの行動に少し引いてしまった私だけど…

私は、握手を受け入れた。

「で、何でウチの弟泣いてんのかな~」と言ってきた。

「わかりません!」と私が言うと、

「そう。まあいい。とりあえず練習見せてもらうね。言い訳は後でたくさん聞いてあげるから」と樹選手は笑った。

そして端の方に移動している。

私たちは練習を始めた。皆張り切っている。

みよりは私に誰?と聞いてきたけど…。

「トッププレイヤーなの、彼」と私は、小さい声で教えた。

数時間の練習を終えると、樹選手は一人一人にアドバイスをしてくれた。

分かりやすくて、丁寧だった。

そして、皆はありがとうございましたと帰って行って、残されたのは私と怜央と樹選手。

「さてと…」と笑みを浮かべる樹選手に思わず顔がこわばってしまった。

「そんな構えないでよ。俺は別に怒ってないしね?話したかっただけだから」と樹選手は笑われた。

私は、ホッと一息ついた。

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