おにいちゃんの友達
冷たい汗が背中をスゥーッと滑り落ちた。

思わず身震いする。

ふと顔を上げると、口を一文字にしてニヤニヤしているマドカと目が合った。

「なんだかんだいっちゃって、実は好きだったなんて話、よくあるよねぇ。」

にやついてるマドカから視線を逸らした。

「だってさー、ユイカってば中学ん頃から好きな人の話になるといつもはぐらかしてさー、『別にいない』ばっかだったじゃん。私達みたいに恋に恋する乙女が、この数年好きな人一人もいないなんて絶対おかしいし。」

「何が恋に恋する乙女よ。自分で言うなっての。」

マドカの変な例えに思わず吹き出した。

その瞬間をねらって、自分が優勢に立つべく切り返す。

「そんなこと言ってるマドカはどうなのよ。マドカだって中学2年の時以来、好きな人いないみたいなこと言ってたけど、本当のとこはどうなんだかぁ?」

私は、マドカの顔を斜め下からいたずらっぽく見上げた。

こういう時、色白の人間は損だなと思う。

マドカの頬がみるみる紅くそまっていく。

「うわ、なになに?りんごみたいになってるんですけどー。」

完全優勢になって、ホッとしていた。

「私の知ってる人~?」

調子に乗りすぎたんだろうか。

いつもの感じで言ったはずだったのに。

まさかマドカが泣き出すなんて!

真っ赤なマドカの頬が少しずつ涙でぬれていく。

うわ、言い過ぎた??!

マドカを泣かせるなんて、今まで一度だってなかったから思いきり焦る。

どうしちゃったの?マドカぁ!

思わず「ごめんごめん、言い過ぎたよ。」って言いながら、マドカの肩に手を置いた。



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