おにいちゃんの友達
マドカは首を横に振りながら、ハンカチで涙をぬぐうと、涙目で私を見て笑った。

「嘘だよーん。」

何が嘘よ。

思いきり泣いてるし。

「嘘なんてあり得ないよ。じゃ、どうして泣いてるの?私がふざけすぎたから?」

「違う違う。なんかよくわかんない。自分でもどうして泣いちゃったか。」

「ほんとに?」

「うん。ユイカのせいじゃないよ。そうそう思春期女子も、情緒不安定なものなのよ。」

「また、そんな変なこと言う-。」

わざと明るく振る舞うマドカの笑顔に少しだけ癒された。

「ごめんね。もう大丈夫?」

「大丈夫だよ。」

マドカは最後に頬をつたった涙をハンカチで拭くと、そのままバッグにしまった。

いつものマドカじゃないマドカ。

女の子に見えた。

って、女の子なんだけどね。普段、そんなしおらしい雰囲気全くないからびっくりしちゃったよ。

結局本音は聞けずじまいだったけど、マドカもきっと恋をしてる。

恋をしてるからわかる、恋をしてる人の気持ち。

私だって、わけもなく泣きたくなること何度もあるもん。

誰にも知られたくない自分の本当の気持ち。

気持ちを抑え込むって、とっても辛いししんどいこと。

だけど、その気持ちが一旦外にあふれちゃったら、もっともっと辛いことになるような気がしてた。

恋の初心者マークの私達は、ちょっとしたことで心がふるえるんだ。

どうしていいかわからなくって。

きっと10年後、20年後、私達がもっと色んな恋をして経験を積んでいったら、笑ってやり過ごせるだろう今。

マドカのぬれた睫を見つめながら、そんなことを考えていた。


その後は、お互い敢えて恋の話には触れずに、いつものようにカフェでおやつタイムをして、くだらない話で笑って過ごした。

クリームソーダ-のクリームをすくって口に入れたその時、制服のポケットに入れていたスマホがふるえた。

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