おにいちゃんの友達
「マサキは今から帰る?」

「ああ、うん。ユイカも?」

「うん。」

普段と違う空気に戸惑ったのか、マサキが珍しく黙り込んだ。

「今日、マサキに話したいことがあるんだけど、一緒に帰ってもいい?」

「え?ああ、構わないよ。でも、ユイカがそんなこと言うの珍しいな。」

私を見るマサキの目は、心なしか緊張していた。

げた箱に飾られたハリボテが笑ってる。

「マサキ、ハリボテ見つけてくれて、本当にありがとう。すごく助かったよ。」

「もういいって。」

マサキは私から顔を背けて靴を履き替えた。

「高校生活最後の選抜対抗リレー出れなかったね。本当にごめんなさい。」

「お前さ、そんなこと言うために一緒に帰ろうって言ってんの?そんなんだったらいらないから。」

マサキは自分の鞄を肩にかけ直して私を見下ろした。

私は慌てて首を横に振った。

「もちろんそのこともあるけど、それ以外もある。」

「ふん。ならいいけど。」

そして続けた。

「選抜リレーに関して言うと、俺全然気にしてないから。毎年出てるしさ。正直ちょっと飽きてきてたっていうか。俺の代わりに出た友達がえらく喜んでたよ。逆にいいことした気分。」

マサキはいたずらっぽく笑った。

マサキの後ろに続いて校門の外に出た。

いつもより早い下校時刻もあって、まだまだ外は明るかった。

今日の空はいつもよりも澄んでる。

「お前らの応援合戦はうまくいったの?」

「うん、お陰様で大盛況だった。」

「よかったじゃん。」

「うん、本当に助かったよ。マサキはその傷、大丈夫?ハリボテのせいだって聞いた。」

「あいつユイカにはしゃべんなって言ったのに言っちゃったんだな。気にしなくていいよ。俺が悪いんだから。ハリボテは何にも関係ないし。」

「先生に何か言われなかった?まさか停学処分なんて受けてないよね?」

マサキは私を見てプッと笑った。

「これくらいの喧嘩でなんないよ。それに理由が理由だったし。3年生ってこともあって、お互い厳重注意で終わったよ。お前、そんなことまで心配してくれてたの?」

よかった。

マサキの心にまで傷がつかなくて。






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