おにいちゃんの友達
時間は刻々と秒を刻んで進んでいく。

決してその秒針は止まってくれない。

悩みながら、笑いながら、迷いながら、でも、何かを決めながら、時と共に歩いてく。

少しずつ過去の自分を脱ぎながら。


いつの間にか秋、冬が過ぎ、高校生活二度目の春が訪れた。

兄は、第二希望だったけど、家から少し離れた国立大学外国語科に進んだ。

将来通訳の仕事がしたいんだって。

通訳の仕事がしたいっていうのも、また在学中に変わるかもしれないけど、とりあえず今は今のベストで進めばいいってあゆみおばちゃんからアドバイスされたらしい。

あゆみおばちゃんは、その後体調は良かったり悪かったりだけど、こないだお見舞いに行ったら「あんたたち兄妹が心配だから、まだまだ元気でいなくちゃね。」なんて言って笑ってた。

子犬のモール達はおばちゃんの頭の上で相変わらず楽しげに揺れている。


マサキは・・・。


マサキは、地方の福祉大学に進んだ。

自分にはやっぱりこれしかないと思うって目を輝かせて地元を離れて行った。

兄とは時々電話で連絡を取ってるみたい。

人を許すことは、人を裏切るよりずっと難しいことだと思う。

だから許せる人は、心のすごく強い人。

マサキは、私にとっての「憧れ」だ。

きっとこれから先もずっと。


兄とマサキの生き方は違う。

だけど、それぞれにかっこいいなって今は思える。

どちらが優れてるとか、そんなんじゃなくて、前を向いて歩いてるだけで皆かっこいい。

そんな単純なことが最近ようやく身にしみてわかった私って、やっぱり未熟なんだろうな。


「ユイカー!聞いてびっくりなんですけど!」

マドカが私のクラスに飛び込んできた。

2年生になって、マドカとはクラスが別れてしまった。

だけど、毎朝こんな感じだ。

「何よ?びっくりって。」

私は鞄からペンケースを取り出しながら、びっくり顔になってるマドカに冷静に聞いた。








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