おにいちゃんの友達
「まさに、今悩んでることの一つがその選択肢なの。」

私は両腕を頭の後にやって、ぐーっと背伸びした。

「どういった選択肢?」

「ようやく入れた高校なんだけどね。部活も今ひとつで気合い入らないし、勉強も何もかもがすごく中途半端でダラダラ過ごしちゃってる感じなの。親友のマドカは資格をとるとか行ってそっちに集中できそうだし、私だけ取り残されて宙ぶらりん状態。マドカには一緒に資格取ろうって誘われたんだけど、資格資格って、何とればいいのかすらわかんないし、その前に将来何やりたいかも全くわかんないの。身動き取れなくなっちゃって。このままでいいと思う?」

「このままでいいんじゃない?」

あゆみおばちゃんはあっさり言い放った。

「そんなわけないでしょ-。あっという間に高校生活終わっちゃわない?気づいたら私一人何も決められずに卒業なんてことになったら大変じゃん。」

思わず身を乗り出した。

おばちゃんはくすくす笑いながら、パウンドケーキの端っこをフォークですくい上げて口に入れた。

「だって、まだ高校生活始まったばっかりじゃない。将来のこと決めるなんて事の方が無茶でしょ。この3年間、色んな経験してそれから決めればいいこと。まだ早いわ。」

「でも、もう既に決めてる人たちが現に周りにたくさんいるのよ。」

「たくさんて、何人くらい?」

「ええっと、・・・知る限りでは二人。」

マドカとマサキだけどね。

「二人でたくさんとは言えないわね。」

私は体をイスの背もたれに預けた。

「まぁそうだけどさ。」

思わず口がとがる。

だだをこねた子供みたいに。
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