おにいちゃんの友達
「ユイカ、誰かに恋してるでしょ?」

わわっ!

マサキのこと考えてたのがばれてる?

おばちゃん恐るべし。

「ユイカのお母さんからちらっと聞いたわよ。」

なにそれ!

お母さんのおしゃべり!!

「全然違うし。お母さんが勝手に勘違いして言ってるだけよ。」

私はほおづえをついて、明後日の方向を見た。

「そういう態度がますます怪しいんだけどぉ。」

おばちゃんはケラケラ楽しそうに笑った。

「今は大いに恋したらいいわ。誰かを思いきり好きになって、思いきりぶつかっていって、思いきりふられて。
そういう経験が大事なのよ。」

「ふられるの嫌。」

私はほっぺを膨らました。

「何言ってるの。ふられる回数が多い人間ほど、魅力を備えていくものよ。何でもね。悲しみと幸せは両方あって一つ。どっちかだけってことはあり得ないの。傷つかずに生きるなんてこと、誰もできやしないし、傷つくから次の幸せに繋がるの。」

「おばちゃんの言ってることよくわかんない。」

本当にわからなかった。

ずーっと両思いばっかの人間知ってるもん。

そういう子はすごくかわいいし、何でも持ってるもん。

「幸せそうに見えてる人でも、一つや二つ、辛い過去を背負ってるものよ。見せないだけで。」

おばちゃんの横顔は少し疲れたように見えた。

時計を見たら、もう17時前だった。

お昼から来て、随分おしゃべりしちゃったな。

きっと疲れちゃったんだわ。

「ごめん、おばちゃん。そろそろ帰る時間だね。すっかり長居しちゃった。」

私はお皿とティーカップを持って立ち上がった。

「いいのよ。まだいてくれて。ユイカとしゃべってると楽しいわ。」

流しに使ったお皿を置く。

キッチンもいつも整然と片づけられている。

どこにそんな時間があるんだか。
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