おにいちゃんの友達
その時、部屋の扉がノックされた。

だ、誰??!

「ただ今、お着替え中~!とか?」

マサキのケラケラ笑う声が聞こえた。

お着替え中?だなんて、なんていやらしい!!

「エッチ!」って叫ぼうとして、声が出なかった。

ただ、ただ顔が火がついたように熱かった。

「ユイカ、せっかくの紅茶が冷めちゃうって母さんが怒ってんぞ。」

兄の声がする。

「もうちょっとしたら下りるって言っといて。」

ようやく声が出た。

階段のきしむ音が聞こえる。

男の人の体重。

私や母が降りる時にはしない、にぶくて重たい音。

階段を踏みしめるゆっくりとした音がとても愛おしいと思った。


それが、私にとってマサキを男として意識した最初の日。



その日の夜。

兄が珍しく私の部屋にやってきた。

勉強机で宿題をしている私の机上をのぞき込む。

「勉強ついていけてる?」

「うん、まあね。」

「バスケは楽しいか?」

「楽しい。」

「好きな奴とかできた?」

思わず、手が止まって、兄の顔を見上げた。

兄は少しニヤニヤしていた。

「図星?」

兄はくすくす笑う。この笑い方、マサキにそっくりだ。

「お兄ちゃんに言う必要はないし。」

また机の上に視線を戻した。

でも心がふわふわして、一向に宿題が進まない。

「ちょっと、お兄ちゃんいたら邪魔なんですけど。」

私は肘で兄のお腹を押しやった。
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