おにいちゃんの友達
ひっくひっくなりながら、必死に「ありがとう」って言った。

泣きながら、どうしてこんなに泣いてるのか自分でもわからなくなってくる。

次第に呼吸も落ち着いて、涙も止まっていった。

「歩ける?」

「うん。」

マドカはゆっくりと私を支えながら体を起こしてくれた。

「駅前の公園にでも行こうか。」

「でも、時間大丈夫?」

気がついたら空は藍色に染まり始めていた。

「遅くなっちゃうからもう帰ろう。」

私は無理矢理笑って言った。

マドカはぶんぶん首を横に振った。

「きっとこのまま帰ったら、部屋で一人になった時、ユイカはまた泣いちゃうでしょ?」

そう。多分そうだよね。

マサキとその後ろにいた「ひと」の姿は完全に脳裏に焼き付いていた。

「まだ18時半だし、大丈夫よ。」

「もう18時半じゃん。」

そう言いながら思わず素で笑ってしまった。

マドカも私を見て笑った。

二人で家にメールを打つ。

少し遅くなるって。

二人並んで、ゆっくりと公園に歩く。

公園はカップルが何組か来ていて、薄暗がりの中でベンチで楽しそうに笑っていた。

ひょっとしたら、マサキ達もここに来るんだろうか。

そして、あのカップルみたいに顔を見合わせて、腕を絡ませて笑いあうんだろう。

だからどうだっての?

しょうがないじゃん。

付き合ってるんだから。

私がマサキを好きなんてこと、マサキは全く知らないんだから。

当然だよ。マサキもマサキの後ろにいた「ひと」も全く悪くない。

「彼氏に鞄持ってもらうのはどうかと思うけどね。」

思わず口からついて出た。

「へー、そんなとこまで見てたんだ。私は全然気づかなかったよ。」

「平気な顔して持たせてた。」

「嫌な女だね。」

マドカは鼻の頭に皺をよせて言った。

その顔がおかしくて、思わず吹き出す。

「でも、なんだか大人な雰囲気の女性だったよね。」

マドカは私をブランコの方に引っ張って行きながら言った。

私はその「ひと」の顔も形もほとんど覚えてなかった。
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