おにいちゃんの友達
兄がマサキに敵わないっていう理由は、まだ漠然としていた。

確かに兄の方が優れてることはたくさんあるんだけど、マサキにはあって兄にはない決定的なものがあるような気がしていた。

マサキはどんなに悩んで落ち込んでいても、兄みたいに寝てばかりの生活は送らないと思う。

それがどうしてそうできるのか?

マサキは・・・私がマサキを好きなのは、きっとその部分。はっきりとはわからないんだけど。

マサキのこと忘れなきゃって思っていたけど、こうやってその存在を思い浮かべてしまうと、また胸の奥がズキンと痛んだ。

一度好きになった人を忘れるって、かなり難しいことなのかもしれない。

新しく好きな人が現れるまで。

「伝えないの?自分の気持ち。」って言うマドカの声が頭の中にこだましていた。

自分の部屋に入って静かに扉を閉めた。

しばらくマサキにどうやって告白すればいいのかって悩む。

呼び出して?

そんな不自然なことできる?いつも顔合わしてるマサキに。

マサキに「好きです」ってうつむいて言う・・・小学校から知ってるマサキはきっとそんなこと私が言ったら大爆笑するにきまってる。

そんな風にされたら、復活できないくらいに落ち込んじゃうよね。

マサキのことがトラウマになって、新しい恋なんてできやしない。

頭を横にぶんぶんと振った。

やっぱりマサキに気持ち伝えるなんて、ぜーったい無理!

例えそれが後悔の塊になって、自分の中に残っちゃったとしても。

相変わらずネガティブ思考が止まらない自分に嫌気が差した。

兄と同じだ。

兄妹そろってネガティブで心配性。こないだマサキにも言われたよね。

だけど、兄みたいにあゆみおばちゃんのことを気遣えなくなるほど、凹んではいないわ。

大丈夫。

あゆみおばちゃんに元気わけにいくのに、こんなんじゃだめだよね。

制服をすばやく脱いで、ルームウェアに着替えるとキッチンに降りていった。




< 87 / 152 >

この作品をシェア

pagetop