キスラバーズ

痛みと憎しみの間で

学校に着き、クラスへ向かうと

いきなり髪を引っ張られ、女子トイレに引き摺り込まれた

「痛い!痛い!離して!離してよ!」

頭が千切れそう

「へぇ、水菜君の彼女ってあなただったの…全然釣り合わないじゃない。譲りなさいよ!」

バシッ

平手打ちを食らう私

「なんで?朝比奈さん!」

「なんでですって?はん!図々しく水菜君の彼女の座に居座って、ブスでスタイルも良く無いくせに。」

また私をぶって、腹に蹴りを入れた

口が切れて、血の味が広がる

「わ、たし、は…新の…「汚い口で彼の名前を呼ばないでよ、彼が汚れるわっ!別れなさい!今すぐに!」

何を言うの?

「嫌、彼を取らないで!」

弱々しい声が響いた

「見てなさい、絶対彼をものにしてみせるから!」

彼女は、私を置いて出て行った

くっ、立てない…なんで?蹴られたから?

痛いよぉ、あらた助けて

涙が溢れ出てきた

動けるようになったのは、それから10分後のことだった

ふらふらとクラスに向かう

最悪、髪も顔も全部ぐちゃぐちゃにされた、新に顔を合わせられない

新がこっちに向かってくる

「どうしたの?顔、晴れてるけど、誰にやられたの?」

どうしよう、言おうかな…でも、もっと酷くなるかもしれない、新も巻き込まれるかも

「階段から落ちたの。心配しないで、すぐ治るから。」

心配かけたく無いし、やっぱり朝比奈さんのほうがいいのかな、邪魔なのかな

泣きそうなのをこらえて笑う

笑え、なんでも無いように装え、ピエロみたいに、ばかみたいにさ

それから、また殴られた

朝も昼も夜も、また繰り返す…肋骨が折れた

ボロボロの身体を引きずって病院に向かった

「如月 ここさーん。中待合までどうぞ!」

私はゆっくり中待合に向かう

っ!

「あ、らた?なんで?」

「…隠せてると思った?階段でどう落ちたの?ん?手足が生えてて攻撃してきたとか?」

あはは、ばれちゃったなぁ…

「ははっ、新…ごめんね、こんなんなっちゃった…ボロボロだよ。もともと可愛く無いのにさらにブスになっちゃった。嫌だよね、別れたいよね、いいよ…こんな姿で隣にいられないし。」

笑え笑え笑え笑え!

「ここ、お前なんか勘違いして無いか?」

「へ?」

「俺は、お前の仕草とか、声とか、外見的な好きじゃ無いんだよ…俺は、如月 ここが好きなんだ!」

だめだ、もう笑えないや

「うっ…くっ…あらたに…心配かけたく…なかったの。ひっく…」

泣きじゃくる私

「まずは、診察を受けてから聞くから。」

医者からの診断は驚愕だった

打撲は数十カ所、骨折二ヶ所だった

本当にボロボロだな私

「全治一ヶ月かぁ、長!」

「んで、ここちゃん…誰にやられたのかなぁー?」

指をポキポキ鳴らしながら黒い笑みを浮かべた

「…あさ、ひなさん…でも!酷いことしないで?彼女は悪く無いの!」

「ここを傷付けた奴は女でも許さねぇ。」

普段は優しい顔をしてるのに、いまはまるで鬼のようだった

「お願い、新。酷いことしないでね…朝比奈さんの気持ち…わからなくはないから。」

「それ、どういう意味だよ。こんなにボロボロにされて、悔しくないのか?」

「朝比奈さん、新が好きなんだよ…だから私に八つ当たりしたの。私のせいにしたかったの。」

「…わかったよ、でも、話し合いくらいはさせろよ?」

また黒い笑みを浮かべる新

ベッドに横たわった私は新の手を握った

「ここ?「しばらく、握ってたい…だめ?」」

新を見つめる

「…いいよ、寝るまで傍にいるから。安心して。」

頷くこともできない…

私はやはり弱い
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