キスラバーズ
ああああああああ!

自己嫌悪の雨が心に刺さる

痛い、怪我なんて無いのに、胸が痛い、この痛みで死ねたならどんなに幸福なのかな?

いっその事…

筆箱の中のカッターが目に入る

手首でも切ろうか?

全部台無しにしてしまおうか?

家に着いてからというもの、私の疲労とストレスは限界を超えていた

右手に光るカッター…

そっと手首にあて、力を込めて引いた

ポタポタ…落ちていく真紅の雫

「これでいい…初恋は叶わなかったけど。恋ができた…お父さん…お母さん、ここもうだめなんだ、辛くてたまらないの…だから、迎えに来て…」

絶え間なく流れ続ける赤

意識は朦朧としていて、全身を倦怠感が包む

後悔があるとすれば、最後に新に会えないことかな…

薄れて行く意識、荒くなっていく吐息

「ここ!開けろ!ここ!」

ははは、思い過ぎて幻聴が聞こえるようになったらしいな…気づけ私、新は来ないの…

強がんなよ私、本当は幻聴でも幻覚でもいいから新に会いたいくせに

重くて上がらない腕を伸ばし、助けを求めた

「た、すけて…あらた…く、るし、いの…」

バタンッ

玄関から?それとも裏庭から?

大きい影が私に向かって話しかけてくる

「ここ!」

視界がぼやけて見えないなぁ、でも、この声…落ち着く

影が優しく私を抱き寄せた

暖かい…

私はそっと意識を手放した
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