キスラバーズ
翌朝、また同じベッドの上…点滴の管がある右手を上に上げる

白いなぁ…

元の色に早く戻りたい…青白いのは嫌

左手を見ると、包帯がきっちり巻いてあった…

ちょっと痒い

痛みは無いけど、傷を見たらきっとあの感覚を思い出す

柔らかい肉の切れる感触…流れていく血…薄れゆく意識と倦怠感をきっと思い出す

看護婦さんには、傷は縫ってあると言われた

そんな深く切ったのかな?

不意にカレンダーが目に止まった

今日は何日かな?

電波時計の日付を目で探す

えっ?嘘、私三日間くらい寝てたの⁈

リスカって怖い

寝すぎて寝れないってこと無いなぁ…血が足りないのかな…

まだふわふわした感覚が襲う時がある…血はまた作られて行くから寝れば治るか…

ピコーン

ベッドに付いているサイドテーブルからLINEの着信音が漏れる

あ、LINE見るの忘れてた…

見ると美希ちゃんからのメッセージがたくさん入っていた

「ここ?大丈夫?リスカって本当?心配だから気づいたら連絡してね!」

美希ちゃんらしいな

「大丈夫だよ、美希ちゃん…まだ体力無いけど…すぐ学校に行けるから。」

LINEを送信して、間もなく…美希ちゃんから電話がかかってきた

「ここ!無事なの?どこの病院?今行くから教えて!」

そう言えばここどこだろう?

「待って、看護婦さん呼ぶから…」

ベッドから降りると、バランスが取れず座り込んでしまった

ベッドに戻ろうとするが、うまく力が入らない

「ここ?何してるの?」

後ろから声が聞こえ、私は振り返った

「あ、新…実は…その…戻れなくなっちゃった…」

恥ずかしくて死にそう

「ここ、腕を俺の首に回して…」

管が付いた腕を新の首に回す

新は私の背中と膝の裏に手を差し入れ、持ち上げた

「っ!新?重いよ!無理しないで!」

顔が熱くなってくる

「ここ暴れたら危ないから、じっとしてて。」

あの、新さん…下ろしてくれる気配無いんですけども…

流石に暴れて落ちたら怪我をするので、大人しく新にお姫様抱っこされる

「クスッ真っ赤になって…ここは可愛いな…」

「そう言うのずるい!」

暴れてやりたいのに、身体が言うこと聞かない

新に見つめられると、ドキドキしっぱなしで何も考えられない

ちゅっ

新がキスをしてくる

「はわわっ///」

「今度またゆっくり出来る時にするね。」

新は私をゆっくりベッドに下ろす

あ、美希ちゃんと電話してたんだった!全部聞かれたよね?恥ずかしい…

携帯を恐る恐る見る

「えっ?」

「ここ、病院は通話禁止だよ?」
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