Pioneerーあなたは私のパイオニアー
花火を打ち上げる音が、一度鳴りやんだ。
「あれ…これでもう終わりですかね?」
「違うよ、ここの花火は前半と後半に分かれていて、間に15分時間が入るんだ」
へぇ、よく知ってるなぁ…。
「なら、また移動してもいいですか?」
私としては、彼と二人で座って見たいと思う。
まぁ彼次第だが。
「うん、いいよ。混み出したから、見失わないでね。じゃあ行こうか?」
「はい」
私達は着いた時に見かけた小さなベンチを目指して、並んでゆっくり歩き出した。

少し歩いた頃、案の定彼を見失いかけた。私が人並みにのまれてしまった為だ。
「あ、荒木先生っ…待って…ください…」
「ほら、俺の左手…握って…?」
「そうしますっ」
数秒後に気づいたのだが、私達は手を繋いだようだ。
必死すぎて、この瞬間の私に自覚は無かったけど…。

そうこうしているうちに、15分が経過した。また、花火が夜空に輝き始める。
私達は無事に移動でき、今は目的だったベンチで座りながら花火を見ている。

最近はずっと花火なんて見ていなかった。それに、私の人生の中で、一緒に花火を見たのは家族のみだろう。
こうして家族以外の人…しかも男性と花火を見るなんて初めて。
今更そんなことに気づいて、照れくささによって少しだけ頬が熱くなった。
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