熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
「初舞台、お疲れ~」
暖かい笑顔で迎えてくれる彼。だけど、その笑顔が逆に辛かった。
「ありがと…」
あたしは汗でグシャグシャになった髪をタオルで拭きながら答えた。でも、できれば彼には今日の舞台は見てほしくなかった。
「あたし…どこにいたか見つけられなかったよね…?」
「ちゃんと見つけたよ。馬の後ろ足だろ?」
即答だった。
「えっ…」
「舞台デビューする、って言ってたのに全然顔が見えないから、俺、考えたんだ。今日のお芝居の中で顔出ししてないのは“馬の前足役”と“後ろ足役”の2人だけ。だけど前足はゴツイし、ガニ股ぎみでどう見てもアレはオトコの足だった。だから残るは後ろ足だけってことになる。実際、華奢(きゃしゃ)で内股ぎみで、アレは女のコの足だったし、なぎさの足にまちがいないと思った」
まるでテレビアニメの名探偵みたいな鮮やかすぎるほどの推理だった。
「さすがは鋭い推理だわ……」
そのとき、あたし心から彼を尊敬した。
「推理ってゆーか、単なる消去法さ」