熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
家の前には、郵便配達のバイクも、宅配便のクルマもとまっていない。セールスマンらしき人もいない。

いたのは豪雨の中、ズブ濡れになっている学制服姿の航平くんだった。

「こんにちは! 俺、安座間さんのクラスメイトの比嘉っていいます!」

ズブ濡れの航平くんが叫ぶ。

「今日、安座間さん、学校休んだんで、心配になって来てみました!」

航平くん、なんであたしンちの場所?…って先生かクラスの誰か訊けば分かるか。

「すいません! 誰もいないんですか!」

“ピンポーン…”

「すいません! すいません!」

“ピンポン、ピンポーン…”


このまま無視してれば留守だと思って帰るだろう。最初、あたしはそう思った。

だけど、いつまでも雨に打たれながらズブ濡れの彼が「すいません」を繰り返しているのを見ているうちに、あたしはいたたまれないような気持ちになってしまい、2階から駆け下り、玄関のドアを開けてしまった。

「航平くん……」

「な、なぎさ……」


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