熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~
なりゆき上とはいえ、はじめて彼があたしの部屋に来た。…ってゆうか、15年間の人生の中で父さん以外の男の人が、あたしの部屋に入ったのははじめてかもしれない。

もし今、親が帰ってきたら、親のいない間に自分の部屋にオトコを連れ込んだあたしのことを、親はどんなふうに思うんだろう?…なんて、またいつものように頭の中で、次々と妄想が膨らんだ。

彼はフローリングの床にクッションを敷いて座っていた。ベッドに座ってもいいよ、と言ったのに、やめとく、と言って。

「はい……カラダがあったまると思うから」

ホットコーヒーを勧めるあたし。まだ外は蒸し暑かったけど、冷え切った彼のカラダにはホットコーヒーが必要だと思ったからだ。あたしもアイスコーヒーではなくホットコーヒーに付き合った。

「おぅ、サンキュ。思ったより元気そうで安心した。…つーか、今日休んだのは病気のせいとかじゃねぇんだろ?」

「………」

彼に付き合ってフローリングの床にクッションを敷いて座っていたあたしは、黙ってコーヒーをひとくち飲んだ。

「俺さ、昨夜お前から届いたメールのこと、ずっと気になってたんだけど『全部なかったことにしてほしい』って……。俺、なんか、お前の気に触るようなことしたか?」

「………」

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